2017 October
Installation @ Shiseido Gallery
資生堂ギャラリーにて開催された「LINK OF LIFE 2017 まわれ右脳!展」にインスタレーション展示で参加しました。
[LINK OF LIFE展とは]クリエイティブディレクター藤原大さんの元、資生堂の研究員、社員が異分野のクリエイターや企業・団体とリンクして新たな価値創造の可能性を探り、展覧会という形式で発表する、2015年より続く資生堂文化発信の場。
今年の展示テーマは「現代における新しい美」。『右脳を刺激して感性を研ぎ澄ませ、遊びゴコロを満たして美しさを重ねる』=『asobi-neering(アソビニアリング)』という考え方を元に、、感性(右脳)刺激によってひとが本来持つ美しさを引きだすアート作品として、資生堂研究員加藤康男さんと、下記の作品を製作しました。
A Room of Dis-edge(身体の境界線がとける部屋)
「人体通信」(人体を伝送路として用いる未来通信技術)の研究を長年続けてきた資生堂主任研究員の加藤康男さんと共につくった、「モノとヒト」「ヒトとヒト」がつながり、ひとつになる「対話の部屋」です。
[人体通信とは]
ものすごく端的に言うと、人体に流れる電磁波に「音声データ」を流して音楽を聴いてみる試みです。
お客さんはワイヤレスヘッドホンを装着し、部屋の真ん中にある「水」に、手で触れていきます。水に触れると、何にも繋がっていないはずのヘッドホンから、”音”が流れ始めます。それぞれ水には容器に取り付けられた電極から微電流を流しており、その電流が水から人体を伝わってワイヤレスヘッドホンとつながり、音楽が流れる仕掛けです。(容器の裏にはMP3プレイヤーが接続されていて、そこで流れている音源が、電極からの電流を伝わってヘッドホンに届きます。)
水と体が「電流」によって一つの物体となり、自分と外界の境界線が溶けていくことから、「身体の境界線がとける部屋」と名づけました。
モノにはそれぞれ周波数があり、そこを電流を流してチャネリングすることで物質的に一つに繋がってみる体験です。例えばラジオは空気中の周波数に音源を乗せそれを端末がキャッチすることで音を再生しますが、この展示ではお客さん自身が「空気」や「ケーブル」の役割をもち、音源と再生機をつなげます。モノやコトの細分化が進んで、人同士が境界線をひいてしまいがちな現代社会への批判も含めて、「境界線をとかす」試みをしようと思いました。
……例えば恋人同士が手を繋いだ時、抱き合う時、赤ちゃんがお腹のなかにいる時、「どこからどこまでが私で、どこからどこまでがあなた」なのだろうか。壁にずっと手をあてていると手の体温と壁の体温がだんだん同じになってきて、「触れている」という感覚自体がなくなっていく現象にも似ています。境界線とはなんと曖昧なものなのか、感じてもらえたらと思いました。
展示中得られた「発見」
この人体通信の面白いところは、水に触れている人に触ることで、同じようにヘッドホンに音が届くところです。
下の写真で、水に触れている白衣の加藤さんと手をつなぐと、私自身は水に触れていないのに、「音」が聞こえました。水→人体→人体、と電流が通り、水から流れる音が私のヘッドホンまで届くのです。(今回はヘッドホンを3つまでしか用意できなかったのですが、20人ほどの長い「人間ケーブル」を作ることが可能なのだとか)
知らない人同士でお互いを触りあったり、ヘッドホンをかぶってる人にしかわからない秘密の体験を共有しあったり、そんな「つながり」がうまれたらいいなと思いました。
またもう一つ面白い試みとして、左手で「ドラム」が流れている水、右手で「ピアノ」が流れている水に触れると…..、ヘッドホンで音が「混線」し、「ドラムとピアノの音」が両方聞こえました。右手と左手によって「入力」された電気信号が、頭の中で「ミクシング」される不思議な体験でした。これは発見です。
「人体通信」は長年の歴史がありますが、日常に落としこむにはまだ発展途上な技術です。今回の展示による発見を元に、今後も人体通信技術を応用した舞台や、モノと対話をする体験など、実践を重ねてみようと思います。(展示をする場や機会がもしあれば、いつでもご連絡お待ちしています!!)
Staff List:
加藤康男(資生堂 イノベーションデザインラボ)
北海道出身。青山学院大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。1987年、NEC入社。その後NTT厚木通信研究所を経て、2011年からは青山学院大学において人体通信技術の研究に従事。2012年、世界で最も権威ある電気系学術団体IEEEが協賛するシンポジウムにおいて、ベストペーパー賞を受賞。2016年、資生堂入社。美容と電子工学とを融合させた新概念「コスメトロニクス」を提唱。現在、資生堂の現役研究員最高の役職である主幹研究員7人のひとり。
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