2014年11月3日

スワリの森の宝物:デザインと出会って思ったこと。


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東京ミッドタウンDESIGNTOUCHの芝生広場で3週間展示をさせていただいた「スワリの森 SCIENCE×DESIGN」が、昨日3日最終日を迎えました。たくさんの方にお越しいただき、足を運んでくれた友人たちからも、「みんな笑顔でいい空間だった!」と言っていただき、本当に嬉しいです。ありがとうございました。

■感謝の言葉 Appreciation

まず最初に。

このブログは、あくまで空間演出的な観点で、とても大切なことを得たという古屋遙の個人的な観点で書かれております。スワリの森は私個人のプロジェクトではもちろんなく、私はディレクションという立場で、あくまでその一環を担ったにすぎません。企画プロデュースをされたNHKエデュケーショナルさんはじめ、参加された全ての方のプロジェクトであることを先にお伝えしておきたいと思います!

その上で、まず今回ご一緒させてくださった皆様に、お礼を。

今回森のディレクションをする機会をくださった東京ミッドタウン、全体の企画・プロデュースを担当されたNHKエデュケーショナル(Eテレ)の阿部さん、倉森さん、桝本さん石田さん、無茶なアイデアを本当に素晴らしいクオリティで実現してくださったNHKアートの小田さんと、CPLの皆様、一緒にアイデア考えてくださった科学監修のガリレオ工房の稲田さん・原口さん、3週間イスとお客さんの安全をまもってくださった森の番人 堀越さんはじめ運営の皆様、美しい地球そのものを感じるような素敵なコンセプトのイスを作ってくださり、会場の作り方について厳しいアドバイスをくださった鈴木康広さん中村製作所の皆様、美しい水のイスで森をずっと輝かせてくださった鈴木啓太さん定岡デザイン研究所 日本ビニル工業会の皆様、力強い紙のどうぶつイスを作ってくださった関口光太郎さん、最後までクオリティアップの為に粘ってくださった大西麻貴+百田有希/o+hさん、楽しい楽器のイスを3つも作ってくださったmagmaさん、ロゴや葉っぱカードのデザインをしてくださった岡崎智弘さん、森の番人衣装の刺繍を作ってくださった小林万里子さん、初期のパースを作成してくださり・空間作りのアドバイスを下さった山道拓人さん、撤収お手伝いしてくれた北川まりえちゃん、色々支えてくれた母と父、親戚のみんなと友人たち!!!

皆さん私よりも先輩で、学ばせていただくことばかりで、今回たくさんの先生たちに囲まれてひとつの空間を作り上げられたことに心より感謝です。今年7月、フリーランスになったばかりの自分にとっては、本当に大舞台で、沢山の方々にご迷惑をおかけしつつ、でもわからないことはバリバリ聞きつつ、怒られつつ、なんとか形にすることができました。

また、たくさんの嬉しい笑顔・言葉・動き を残してくださったお客さんのみなさま。たくさんの宝物を、本当にありがとうございました。

今日は、スワリの森最終日から1日たって、考えたこと。たくさんの学びがあったことを共有したいと思い、文章にしようと思いました。

映像が中心だった私が、デザインと出会って考えたこと。

■学び  のメモ   Memo of  Thinking

よかったことと、気づいたこと。

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不便は会話の母である。

今回印象的だったのは、予想以上に、お客さん同士の間に「会話」が多く生まれてたことだ。イスに座るという日常的でシンプルな行動にもかかわらず、通常のイスに座る時は生まれないような「会話」がたくさん生じていたのは面白かった。例えば、ハートバランスイスでは、バランスを取るために「もっとこっち寄って」と“協力”のための会話が生まれていたり、ヒミツを打ち明けるイスは、聞こえるかどうか、をしきりに確かめ合う“確認”の会話が生まれていた。科学のヒミツを知ったお客さんが、そのヒミツに気づかない隣の人に「これはね…」とウンチクを説明していたり、その説明を小耳に挟んだまた別の人が、隣の人にそれを伝えて…と「ウンチクの伝言ゲーム」が生まれていた事にも、空間としての可能性を1つ感じた。

展示空間って、お客さんはそれぞれのプライベート空間をどこか守りながら、静かに鑑賞するイメージが強いんだけど、この森はお客さんのプライベート空間がいい意味で食い合っていて、壁を壊していたように思える。

不便 は 人の距離を近づけるのかもしれない。もしかしたらすごく当たり前の事を言っているのかもしれないが、自然という脅威が日常的にある地方の人達程、お互いの顔を知り、対話し、支えあっている。今年の冬、都内で大雪が降った時、普段見かけない光景に、興味深いと思ったことがある。いつもは話さないお隣さん同士が、雪かきをしながら「振りましたねえ」「そうですねえ」と会話を交わしていたことだった。

不便のデザイン。何かのヒントになりそうである。

また「次はあれ座ろう」とか「これも座れるのかな?」とか、「座る」ということが空間の共通ルールとしてしっかり浸透していたことも嬉しかった。看板や、スワリの森というタイトルによる効果だとは思うけど、座るというルールが前提として浸透していたことで、「どう座ると、何が起きるのか」を検証・想像させる行動へと誘えたのは、まず空間として成功だったように思う。

空間のルールは、情報でもいいから、入口でわかりやすく伝えること。それがひとつひとつの体験の質を上げる。

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アンサーよりクエスチョン。

スワリの森は「疑問」「想像」の森であったと思う。スワリの森にあるのは、共通してどこか”不便”なイスであり、そしてそれは、この森に関しては、ポジティブな意味合いとして作用していた。イスにはそれぞれ「謎」があり、その「謎」は座らないとわからない。座っても、暫く体験・思考してみないと答えが解らない物もあった。一見イスに見えないので、自分の参加がどうインタラクトするのか、一見すると全く解らないようなデザインになっていた。

「?」 と 「!」 の間を絶妙にデザインすることで、「探る」という行動に導く。

今回大事だったのは、お客さんを、「探る」という体験に導くことだった。科学は”疑問”(?)から始まり、”仮説と仮定”を元に、”検証”を重ねて”答え(!)”を得る事に特徴があると思い、空間を作る上でもそこは重要なポイントだった。スワリの森は、科学の空間だから、そこにはアンサーよりも先に、クエスチョンがあってほしかった。それは一見すると、不親切な空間なのだけれど、科学をテーマにする上で、そこは振り切ったところだった。

そのためには、「知る」より先に、「知りたい」という感情を呼び起こす興味のデザイン(ビジュアル:視覚)がまず必要で、その次に「探る」という体験へ導くことが大事だった。スワリの森のイスが、「へんてこ」な形をしているのは、視覚的に「気になる」という興味のスイッチを押すためである。探り方を「座る」というシンプルなアクションに統一することで、多くの人が参加できる「実験の場」になったと思う。(伝え方、には反省は多いけど…)

「科学」の歴史において失敗と発明を繰り返してきた科学者たちの、「思考錯誤のプロセス」そのものを、何百分のいちのスケールで体験できる場!?みたいになれていたら嬉しい。

スワリの森は、展示されていたものがプロダクトだが、未来のプロダクトの提案をする場所ではなく、どちらかというと、”今”の「ものの見方」に対する実験の場であったようにも思える。水に座ると心地よい、遠くはなれた人と会話が通じた時に感動する、地球は丸かった、など体験を通さずに、情報として当たり前だと思っていた事柄を、「もう一度体験して気づいてみよう」と提案する場所であったようにも思える。閉じていたセンサーをもう一度開くような、試みになっていたら嬉しい。

想像の余白について。

最近「想像力」という”絶滅危惧種”についてよく考える。答えを知りたければググればすぐに拾えてしまう今の世の中で、「疑問を抱く」「解らない」という感情と人が付き合う時間は、人類の歴史を通してみると、限りなく短くなっている。「これはなんなんだろう?」「解らないなら色々試してみよう」「もし〜だったらどうなるんだろう」という想像の余白がどんどん絶滅していっているということに、私は危機感を感じている。

「もし〜をしたらこうなるのでは。」という仮定・想像そのものが科学の発端だったとすれば、想像力が喪失していく事は、イノベーションにおいてとても危機的状況だと思う。人類の、想像力の喪失と共に、進化は減速していってはいないだろうか。

そういう意味で、スワリの森という空間は「ググっても答えが出てこない」空間には成り得たと思っている。(もちろん会期中、ブログ等によって「情報」として答えは拡散はしていくのだけれど)

科学の空間を作る上で、まず「?」が浮かび、その後それが「!」に代わる体験のデザイン。それには「想像する余白」の作り方が、大事なのかもしれない。そしてそれはイノベーションにおいても重要な方程式であるように思える。

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山があれば登る。穴があれば覗く。デザインと行動心理。

穴があれば覗く。傾斜は登りたくなる。1段上がると特別な気持ちになる―。デザインは「無意識」のうちに、人を「とある行動」へと誘う魔法であると今回思い知った。そして目指した行動へと確実に誘える人が、プロのデザイナー何だと思う。今回、いくつか自分がデザインしたイスについて「無意識なる無意識」を生んでしまったことをここに書いておきたい。

私の頭をガツンと殴り、そして誰よりも、デザインについて教えてくれたのは子供たちだった。切り株イスは、「ゆっくり腰を落ち着かせるイス」であった筈が、子どもたちにとっては全く違う(むしろ真逆の)感性を刺激してしまったようだ。大人にとってはゆっくり腰を落ち着かせ、気づいた人は年表から歴史を学ぶ場所になっていたけれど、一部の子供たちにとってそこは、「走り回るグラウンド」であり、そして「アナ雪を歌うための歌姫のステージ」だったのだ!切り株の年表はその形状から「走り幅跳び」のステージに変身し、切り株の年輪模様は、まさにグラウンドそのもの。子どもたちの「走り回りたい!」欲を即座に刺激してしまった。

切り株イスが、「運動のための切り株」だったらベターだったのだけれど。かくして子どもたちにとっては、じっくり腰を下ろすのとは全く「逆」の心理的作用を与えてしまったのだ。楽しんでもらえたのは間違いないが、当初予定していた以外の行動をも刺激してしまったことには、発見があった。

硬そうなのに柔らかいイスも、そうである。私は人の「思い込み」を逆手に取るために、素材は柔らいのに見た目が硬い、という体験をつくろうと思った。硬そうなイスというビジュアルを達成するために、片方に勢い良く傾斜した座面を作ったが、それは結果、子どもたちにとっては「登り易い山」となり「滑り台」となった。柔らかい、と気づくより先に「頂上を目指す」為のイスという目的の方が子どもたちにとって魅力的だったようだ。

子供の行動はとても素直なので、彼らの行動心理は正しいように思える。そこに教えてもらった部分は非常に多い。

デザインは「無意識」のうちに、人を「とある行動」へと誘う魔法である。それは狙っていない「無意識の行動」すら呼び起こすので、ありとあらゆる「行動のスイッチ」を想定する必要がある。

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人は人の身を真似し、公共スペースの”作法”は出来上がる。

そこに人が座っていれば次の人は座り、人が立っていれば次の人も立つものである。公共空間において、人の動きを決定づけるのは、その前の人の行動が決めることが多い。そこをもう少し意識していれば、また違ったデザインが出来たかもしれないな、と思っている。切り株イスは顕著で、人が腰掛けていればそれは腰掛けるイスとなり、子供が駆けまわっていれば次の人から見ると、それはグラウンドなのである。公共空間には、様々な価値観と主観を持った人が集まる。そこで、人の行動をコントロールするためには、一番最初の人にどういう行動を起こさせるかを、計算するようにしたい。

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車いすのお客さんが教えてくれたこと。

車いすのお客さんが来てくださったことがあった。 スワリの森は座る事に特化した展示なんだから車椅子の人が最高に楽しめるべき展示であるはずだ。と思って、耳のイスの座るところをえいっとどかして、車椅子のままそこに座っていただいたら、同じ体験ができて、聞こえた、って喜んでくれた。涙が出そうだった。

もし全てのイスが、車イスの人も、そうでない人も、同じ体験をすることができるものであったら。もっと素晴らしい体験のデザインになっただろう。次、何かのおりには、是非そういう視点で空間と体験のデザインをしてみたい。そう思っています。

人の視点は「ひとつ」ではない。誰もが同じ質の体験を出来る空間は可能か??

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■森から生まれた次のミッション

スワリの森とは別に、今後やりたいなーと思ったことがこの空間から、いくつか生まれて、色々リサーチ中です。頭のなかにひっそりしているのもあれなので、ここに書いてしまいます。一緒に実現してくださる企業さま、団体さま、個人さまを募集しております。心当たりのある方はこちらまでご連絡いただけますと嬉しいです。まずはアイデアを一緒に考えに伺いたいと思います。(古屋遙   furuyaharuka@gmail.com)

 

科学と教育のデザインミッション

科学を学ぶための教育ツールのリデザイン。具体的には既存の教育キットのプロダクト・リ・デザインをするということ。日本の教育ツールって、可愛い物が少ないよね、という話をガリレオ工房の原口さんとしていて、プロジェクト化したいと思いました。西洋では、科学の実験キットも、可愛くカラーリングされていたり、直感的にワクワクするデザインのものが多く、学習そのものをワクワクさせる工夫を施すのが上手いと思う。日本の教育や学習に対する姿勢にもいえますが、率先して手を伸ばしたくなるようなツールが、教育の世界でもっと増えるといいのになあ、と。なんとかそういった「教育をデザインでわくわくしたものにする」という試みを出来ないだろうかと思っています。

公園のデザイン

「公共空間のデザイン」特に「公園のデザイン」の仕事をしたく、デザインさせていただける公園・公共スペース案件を現在探しております。今回スワリの森でお客さんの反応を見ていて、デザインによって、人のココロや好奇心を開放するスペースはいかに作れるか、ヒントを得ることが出来ました。都内では、子供が好奇心を開放して遊べる、それこそ「森を探検」するようなわくわくできる公園が少ないように思います。子供が遊ぶはずの場所なのに、そうなっていない公園(クリーンなイメージのない公園)も多く見かけます。どの公園を見ても、同じような遊具が置いてあります。一度、公園について、一緒に、ゼロから考えてみたい。それは先程の、車椅子の人もそうじゃない人も共通して楽しめる公共スペース、というテーマも含めて。公共スペースのデザインを、このスワリの森から始まり、続けたいと思っています。

 

想像力 を軸に置いた編集活動

「もしも世の中が〜〜だったら?」そんなもしも、の想像力をテーマに編集者や科学者の方々と、編集プロジェクトの準備を進めています。詳しくは後日発表します!ヒントは、予言書!? 詳しくは後日書きますが(*二回目)、ゆくゆくは想像力をテーマにした博物館を作りたいと思っています。(まず企画書作ります…)

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■最後に  finally…

そんな感じで、本当に宝物ばかり。夏から皆さんのお誘いを受けて企画をはじめて、森をオープンしてから、本当にあっという間でした。上にながながと書いてしまったように、本当にたくさんの発見と、反省がありました。機会をくださったみなさま、お力お貸ししてくださった皆様には心から感謝です。何より、お客さんに1人も怪我人が出ず、またたくさんの笑顔に出会えたこと、1日たった今、本当によかったと、ほっと胸をなでおろしています。

大切な出来事があまりに多かったので、あくまで個人的な、空間演出的観点でブログとしてかかせていただきました。NHKエデュケーショナルの阿部さんはじめ、プロデュースをされたEテレの皆様の努力と情熱がまず根底にあり、実現ができた企画で、今回そこにチームとして幸運にも混ぜていただいたことが、本当に光栄で….改めて感謝をお伝えしたいです!!

本当にありがとうございました。

 

さいごに…..

撤収中、おもしろいことがあったので下に写真を載せます!

大きな切り株イスのしたからは、人に踏まれなかったことで、新しい芝生が生えてきていました。

まるで新しい切り株が、そこから生えてくるようでした!(怪しいんですが、みんなで、つい、宇宙と交信ごっことかしてしまいました。いつまでも大人げなくてすみません。。)

 

この森に関われたこと。たくさんの宝物を得られたこと。

 

たくさんの、感謝と、反省と一緒に、次のミッションにすすみたいとおもいます。

 

本当に

本当に

みなさま

ありがとうございました。

 

written by Haruka Furuya    photos by Yasuyuki Kanazawa  model in photos : Kaho Atsuta

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