“スワリの森 DESIGN×SCIENCE” 科学を体験できるイスたち
November 2014
creative direction/ art direction
東京ミッドタウンで10/17~11/3まで開催されたDESIGN TOUCH2014のメインコンテンツ「スワリの森」を、NHKエデュケーショナルプロデュースの元、科学の楽しさを広める集団ガリレオ工房と共に企画・制作しました。私はプランニングから全体のディレクション及びアートディレクションを担当しました。
デザインのスイッチを押す、というDESIGN TOUCH全体のテーマのもと、「座る」という行為で科学とデザインに対する好奇心のスイッチを押す広場の企画が、立ち上がりました。そこから広場全体の方向性とデザインや世界観の方向性、具体的なイスの科学的要素とデザインを決めていきました。
5組のアーティストとのコラボレーションも実現し、計20種類あまり、30脚ほどのイスが、芝生広場に登場しました。
下記で、各椅子についての詳細です。
ハートバランス!イス designed by Haruka Furuya created by NHKArt/CPL
2人が重心を揃えないとまっすぐ座れないハート型のバランスイス。
<科学メモ>どんな物体にも、1点で重さを支えることのできる点=「重心」があります。この椅子は重心が中央にくると水平な座面に座ることができます。ふたりの体重(力の大きさ)と、座る場所(作用点)から重心までの距離をかけ算した値が等しくなると、つりあいがとれます。
大きな切り株イス designed by Haruka Furuya created by NHKArt/CPL
[生物]樹齢2000年のセコイヤ杉をモチーフにした、みんなで座れる切り株イス。ジャイアントセコイア(セコイアデンドロン)は「生き物」のなかで世界最大のサイズを誇る樹木でアメリカのセコイア国立公園に生息。今回はその中でも平均的な5mのサイズの切り株を再現した。(*参照)
<科学メモ>日本や北米などのように季節がある場所で育つ木は、成長が盛んな時期とゆっくりな時期があるため、1年に1つずつ成長のあとが輪になって残ります。これを年輪と呼びます。年輪の数を数えることで、その木が何歳かがわかります。
樹木が生きる時間と、人間が生きる時間。自然界にたたずむ壮大な時間感覚を体験してもらうため、年輪には、2000年間の人間の「科学史」を記しました。中心の方で人口1億人だったのが、一本の樹が育つ間に、人口はあっという間に50億人を越えていきます。人が生きる時間と自然が生きる時間の、何か壮大なスケールの違いに、いま生きてる瞬間のことを、じっくり考えます。
座ってあたためるイス designed by Haruka Furuya created by NHK art/CPL
[化学]着色を可逆的に変化させるマイクロカプセル化した特殊顔料を使用して、体温によって色と模様が変化する座面のイスを作成しました。親鳥が温めてひなが孵るように、じっと、座ってあたためる。そんな体験をたのしんでもらえるよう、卵の形のイスにしました。
硬そうなのに柔らかいイス designed by Haruka Furuya created by NHK Art/CPL
人は、おもいこみの、生き物。トゲトゲしてる冷たい見た目のイスは、硬そう、と思われるはず。そう思って、見た目は硬そうなデザインなのに、実は柔らかい素材で出来ている、という感覚があべこべになるイスを作りました。
<科学メモ>力を加えると変形し、力を取り去ると元の形に戻る性質を「弾性」と言います。この椅子は硬そうに見えますが、弾性率の小さな素材で作られているため、実は柔らかいのです。
時を告げるイス designed by Haruka Furuya created by NHK Art/CPL
ミッドタウンを時計の針にみたてた大きな日時計のイスです。1時になると、1のイスの前を影が横切っていくので、太陽がビルから顔を出す瞬間に巡りあえます。
<科学メモ>地球は1日1回転していますが(自転),地球を中心に天体の動きを考えると,地球の周りを太陽や星が1日1回転しているようにも見えます。この見かけ上の動きを「日周運動」と言います。影を眺めていると天体の動きをダイナミックに実感できます。
自分を持ち上げるイス designed by Haruka Furuya created by NHK Art/CPL
<科学メモ>滑車には「定滑車」と「動滑車」があります。「定滑車」は固定されていて,紐から伝わる力の向きを変えることができます。「動滑車」は荷物と一緒に上下し、つるす紐の本数分だけ力を分散できるので,小さな力で引けます。このイスでは、動滑車を2つ使うことで、力を1/4にしています。
重力に逆らうことへの憧れを込めて、近代物理学の祖・ニュートンのリンゴの木の逸話をモチーフにしてみました。
ヒミツを打ち明けたくなるイス designed by Haruka Furuya created by NHK Art/CPL
<科学メモ> 放物線を対称軸で回転させたときにできる放物面という曲面でできた「パラボラ」の形状を利用したイス。パラボラに音があたると、反射してある1点に集まります。この点を「焦点」といいます。Aの焦点から出た音はパラボラで反射して平行に進み、Bのパラボラでもう一度反射してBの焦点に集まります。そのため、焦点では遠くの音がはっきりと聞こえるのです。
カップルさんが「好き」と言い合っていたり、知らない人同士で「聞こえますか?」と確認しあったり、素敵なシーンに巡りあうことが出来ました。
日本列島のベンチ designed by 鈴木康広 (website) created by 中村製作所
「日本列島が横たわる向きが、座ることでわかるベンチ。東西南北にひろがる日本の各地に思いをはせてみてください。そして地球上の日本列島はこんなにも丸い!東京にいるあなたが垂直に立つとき、北海道や九州に立つ人がどれだけ傾いているのか、ぜひ体感してみてください。 鈴木康広」
〈科学メモ〉日本は南北に長いため、北海道から九州までゆるやかに弧を描いています。地域によって日の出や日の入り時刻が違うのもこのためです。
視点を変えるイス designed by 大西麻貴+百田有希(o+h) (blog)
「座って筒をのぞくと、まわりの景色がちょっと違って見える。
さかさまに見えたり、近くに見えたり、
〈科学メモ〉小さなものを拡大してみる道具を「顕微鏡」、遠くのものを拡大してみる道具を「望遠鏡」と呼び、どちらもレンズを利用しています。レンズには凸レンズと凹レンズがあり、組み合わせ方によって、そのままの向きで見えたり、逆さまに見えたりと見え方が変わります。
水滴のイス designed by 鈴木啓太 (website)
「芝生にコロンとこぼれた透明の大きなしずく。小さな水滴は、人間の大人のからだにふくまれる水の量。大きな水滴は、ホッキョクグマのからだにふくまれる水の量。まんなかの水滴は、人が一生のうちに流す涙の量ともいわれていますがどうでしょうか。生物は、たくさんの水とともに生きています。 鈴木啓太 」
<科学メモ>あなたの体にふくまれる水の量は???
おとな 体重[kg]×0.6=水の量[kg] こども 体重[kg]×0.7=水の量[kg] あかちゃん(1歳)体重[kg]×0.75=水の量[kg]
紙の動物イス designed by 関口光太郎 (website)
「新聞紙は平面ですが、ぐしゃぐしゃ!と丸めれば、
<科学メモ> 紙は、主に木や草の繊維の集まりでつくられています。繊維がそろっている方向を「紙の目」と呼び、「紙の目」の方向には破れにくいという性質があります。紙の目の方向をうまく利用して、折ったり丸めたりすると更に強くなります。
音が見えるイス designed/created by magma
[物理]「座るといろいろな音が出る。大きい小さい、高い低い。芝生の上でみんなで奏でよう! magma」
<科学メモ> 音を出すものはふるえていて、空気などを伝わって耳に届きます。このイスではバスドラムやシンバルにしかけられた工夫で、ふるえを目でみることができます。また、ウィンドチャイムの短い棒ははやく振動するので高い音を出し、長い棒はゆっくり振動するので低い音を出します。
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●葉っぱのカード〈科学カード〉
designed by 岡崎智弘 (website)
各イスの科学とデザインの詳細が書かれた葉っぱのカード。イスのヒミツを知りたいときに、自分で答えを探せるように、葉っぱカードの入ったボトルをイスの近くに置き、採集袋も作りました。全部コンプリートするためにあちこち回る子どもたちの姿を多く見かけました。
●看板とロゴ。 Logo designed by 岡崎智弘
実はスワリの森の、「森」の字には、ある言葉が隠れてます!
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〈Media〉
日テレPON!
NHK 日曜美術館 アートシーン