[Event]東京藝術大学にてART of 8K に出展・登壇しました。
NHKEテレが主催する8K映像を題材にした展示「ART of 8K」が、12月8日ー16日、東京藝術大学にて行われました。
私は「The Window」という作品を通して、8K映像を窓に見立て、窓の向こう側にいる人物が観客側に干渉してくる体験のあり方を提案しました。
▲6人のパフォーマーがガラスを一斉に叩いたり、ガラス越しにキスをしてきたりと、観客側にどこまで「物理的」に干渉できるか試みた。
12/16のトークセッションでは、他の参加クリエイターとともに、制作の裏側や意図等についてお話しさせていただきました。
私自身は、映像演出や作品づくりという視点というよりは、「ツール」としての提案や、そもそも「映像」として捉える視点から手放すことで新しい可能性が広がるのではと思っていて、セッションでは、”枠組み”としての提案をいくつかさせていただきました。
例えば、映像というのは光の集合体であるわけで、それがより高密度になるというのは、実際の「照明機材」の代替として、より使える可能性が増したということです。(=”8K照明”)例えば、毎日10分、名匠の照明を「お試し」できて、連携したアプリでそれを購入できるような「ショールーム」的な役割にするとか。(これによってバーチャル照明デザイナーみたいな新しい職種だって生まれるかもしれない。)
あるいは、そこに「モニターフレームが有る」(あるいはプロジェクションで投影した場合「投影された壁がある」)という物理的な存在性に着目すれば、窓の向こうや壁の向こうに誰かが本当にいるような「バーチャル団らん」番組サービスや、モニターを「カゴ」と設定し架空のペットを飼う体験ができる「8Kペットショップ」など、四角い窓の向こうに何を置くかによって、さまざまな「観察」が可能になると思いました。
特に番組局が長年培ってきた「生中継」という文化は、技術や演出以前に「流通ルート」の話しだったりもするので、そこに着目すれば大手テレビ局やNHKだからこそ作れないコンテンツはまだまだ十分にありえると思いました
また原寸大の昆虫や小動物を映し出せる「8K図鑑」も、「リアリティ」という意味で、既存の科学番組を塗り替える可能性があります。デジタル放送の双方向性に着目すれば、各モニターサイズに対する実寸を割り出してズームイン・ズームアウトできる仕掛けにしたりとか、テレビの外側の開発に関して模索するきっかけにもなると思いました。
あるいは、高精細映像を背景に、写真や動画を撮れる「背景サービス」として配信してみるのもどうでしょうか。すでにニュース番組などでは背景美術の代替として高精細LEDビジョン使い始めているので、それを日常の中に応用するのは可能性があると思っています。カメラを通してみると8K映像と実物の境界線はより曖昧になるため、実質、リアルタイムアナログ合成できるので、そういった映像をより身近に使ってもらう為の提案はありえるんじゃないかと。
また、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)という眼球刺激による心的外傷後ストレス障害治療法に歴史があるように、眼球刺激の分野で「映像医療」というジャンルが生まれる可能性もあると思っています。(心の病気に、映像ができることはたくさんあると思っています。)
単なるアートとして捉えないで、ツールとして可能性を模索していけば、「放送メディア」はどんどん化けると思っています。
演出家としても、今後は舞台演出家や建築家、あるいは精神科医などが、舞台目線、設計目線、医療目線で映像を演出することになったりと、領域を越境した「演出」の概念が、うまれてくるようにおもいました。
つまり、8K映像が変えていくのは「そういうところ」なんじゃないかと。テレビの中ではなくて、テレビの周りの世界。映像の描写力というよりは、制作に関わる人に新しい職種を作り出すことや、見る人の日常に新しい習慣を作り出すことなのではないかと。
といった感じで…映像演出の枠組みで考えるには難しいお題だと感じたのは他のクリエイターの皆さんに同意でありつつも、私個人的には「うん、可能性しかないな」と実感してワクワクしていたので実はセッション中、演出軸作品軸でものすごく高度なレベルのお話しをされている大先輩方の間で、じつはちょっと形見がせまい思いがしてちょっと落ち込んでいました。 (作家としての解像度が自分に無いことにやや疎外感を感じたと共に、とてもシンプルで純粋に誰もが思いつくことを実現してこそ、技術者や企画者としてプロなんじゃないかと信じていたからです。アイデアだけじゃなくてもっと実現していく立場にならねばと強く感じた場でもありました。)
(個人的にはお客さんがどういう使い方をしたいと考えているか意見を聞いてみたいと思っています。誰もがプランナーになり得ることが、最新技術をツール化させ、文化に昇華させるための何よりもの手段だと思うので、そうやってどんどん「使用者」にアイデアを委ねて、有機的に「用途」を生み出していく流れがオープンにできると、最新技術に対して未来に素晴らしい貢献ができるだろうなと思いました。)
今回実現してみて、演出的にももっとよく見せられる点もたくさん発見できたので、何よりもとても素晴らしい体験をさせてもらったなという感覚です。(いつもこんな貴重な機会をくださる方々には感謝しかありません…。)
個人的な関心としてやはり「文化創造」があり、そのために映像技術をどう使うかという意味でいうと、今とてもおもしろい実践をいくつかのプロジェクトを通してしているので、またどこかでまとめたいと思います。
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